「色々な色を作るのが楽しかった」

職場である知的障害者施設での話。最近、利用者の人たちの主体性の助けになればと表現活動で制作した作品を毎日行われる朝の会で、お互いの作品の感想を言ってもらうようにしている。ここのところ彼らに変化が起きている。最初の頃は彼らの作品を作るときのイメージを他の人に重ねていた。それだけでも大きな変化であったので、自分たちの視線が生まれつつあることに驚いていた。しかしこの間単色に近い、抽象度の高い絵画作品を前にして、自分たちの感じたイメージをどんどん言い出し始めたことがあった。発言の内容を聞いていると、その絵を見て湧き上がった自分の感情を発言していた。それも興奮した様子で。
順序としては、そこに何が描いてあるのかを自分の目を通して発言する段階があり、次に描いた制作者を代弁する(誰々らしいなど)ような段階、そして絵を見て湧き上がる自分の感情の吐露。まるで私は絵を見るワークショップをしているような気分になった。もっと驚いたのは彼らの内の一人が制作していたときの自分の感情、絵を描いている時に「色々な色を作るのが楽しかった」と制作途中の感情を言葉にしたのだった。彼らの中に何が生まれつつあるのだろう。楽しみだ。