2020-01-01から1年間の記事一覧

絵画と額縁の話から現代アートへ -芸術の社会性について-

ホルバイン 皆さん、絵画には額縁が必要だと思いますか。この、額縁という発想自体に歴史性があるのだと思います。例えばゴッホやピカソの時代、額縁は一般的でした。しかし、ピカソのキュビズムやゴッホが戸外に出て絵を描いたことは額縁と絵画の関係を良く…

音を探すワークショップ -芸術の社会性について-

自分の勤めている主に重心(知的と身体に重いハンディキャップがある方)の障害者施設で、音のワークショップが3日間開催された。主催は障害を持った方とアートを繋ぐNPO法人が行った。企画の意図として音という個人的な感覚を、利用者(施設を利用している…

「消える矩形」倉重光則展

横須賀美術館へ倉重光則展を見に行った。海に面した小さな丘の上に建つ空間に作品が置かれていた。先ず先に見たのは倉重が現在まで行って来たインスタレーションの数々をモノクロ写真で再現したものが並べられた空間だった。インスタレーション作品(設置型…

オラファー・エリアソンが我々に投げかけるもの 

オラファー・エリアソンの2014年に行われたルイジアナミュージアムでの展覧会「リバーベッドインミュージアム」の40分のインタビュー動画を見た。展覧会の内容は、大小様々なルイジアナの岩や石で作られたロックガーデンとも言えるランドスケープが美術館中…

「何故これが芸術なのか?」-マルセル・デュシャン-

何故これが芸術なのか?という言葉を時々見かける。何故?の裏には「これが芸術である」という漠然とした了解が存在している。それは今まで見慣れて来た「何か」であり、作品を見る人を脅かさない安心がそこにあるからだろう。それは美しさであったり、狂気…

芸術と眼差しⅣ 「写真家の眼」  

誰もがスマートフォンで気軽に写真を撮れる時代。撮った写真を画像としてSNSに投稿する。そんな時代背景にありながら、では写真家の眼差しとは何なのかを考えてみる。写真家である中平拓馬、ベッヒャー夫妻、マリオ・ジャコメッリの顔を見ていくと、画家や彫…

斉藤義重とは -芸術の社会性について-

最初に斉藤義重の作品を見たのは神奈川県立近代美術館での「斉藤義重展」(1999年)であった。私は90歳を超えた作家の展覧会に度肝を抜かれた。その時強く印象に残っているのは今にも動き出しそうな黒い板状のインスタレーション作品(複合体シリーズ)で、…

芸術と眼差しⅢ 「インスタレーションについて」

私は今、インスタレーションという芸術の作品形式に言及しようとしている。何故か。それは、絵画と彫刻を伝統的に眼差して来た芸術家はインスタレーションという現代の作品形式にどのように関わっているのかという疑問が生じるからである。私も作家として、…

「芸術と福祉」 -芸術の社会性について-

先日職場の福祉施設で理学療法士とアフォーダンスの話になった。アフォーダンス(元々は生態学の用語)とは簡単に言えば、生物が環境に働きかける時に得られる意味のようなもの。福祉の現場で利用者(福祉サービス利用者のこと。以下利用者)の主体性を第一…

パブロ・ピカソとジョルジョ・ブラック -芸術の社会性について-

たまたま福祉の職場でピカソとブラックを紹介することになった。事の発端は日中の活動で行ったコラージュのことだった。美術を学ばなくてもコラージュという言葉は馴染み深いと思う。糊で貼るという意味の言葉。美術史の説明を利用者にするためにインターネ…

「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」 -芸術の社会性について-

不思議な映画だった。今思い出そうとしても上手く出来ない。ドイツのアーティストであるヨーゼフ・ボイスの伝記映画を吉祥寺で観た。ドキュメンタリー映画であり、ボイスのインタビューや、実際に残っている映像を繋ぎ合わせている。また周りにいた知人のイ…

鑑賞と身体 ー芸術の社会性についてー

正月早々川村記念美術館に行って来た。常設展であったが、一度ゆっくり見たいと思っていた。お目当てはアメリカの画家であるエルズワース・ケリーだ。しかし、他の所蔵作品も独特の空間構成の美術館なのでどんなふうに見えるのか楽しみだった。最初の部屋は…