2022-01-01から1年間の記事一覧

絵画と写真の違い ―芸術の社会性について-

ある画廊で、絵画と写真の違いの話になった。自分も漠然とは両者の違いについて考えていたものの、確信のある言葉になってはいなかったので考えてみようと思う。歴史的には肖像画など絵画が社会に対して担っていた仕事を写真が代わって行うようになった事実…

ロバート・ブリアの動く芸術 -芸術の社会性について-

三年に一度行われた芸術祭、あいちトリエンナーレ(現在のあいち2022)は、展示を中止に追い込まれた「表現の不自由展」において日本の芸術の社会性の脆弱さを露呈した。天皇を扱った作品にせよ、従軍慰安婦をテーマにした作品にせよ。美術の展覧会に来…

私たちの傍にあるもの -芸術の社会性について-

築67年の木造アパートを使ったギャラリーカフェHAGISOで「私たちの傍にあるもの」という個展を2022年8月17日から9月11日まで谷中で行った。展示の内容はHAGISOの営業の中で出てきた段ボールをもとに絵画作品を作り、ふらっとカフェに入って来たお客さんの…

観客の問題 ―芸術の社会性についてー

非常に難しい問題でもあるけれどシンプルな問題でもある観客の問題。一般的には芸術家は自身の衝動に駆られて描きたいものを描く、作りたいものを作ると考えられている。観客は安全な場所から芸術家の世界を眺めるという関係。しかし長い美術史の中では、作…

ドクメンタ15とタリン・パデイの活動

ドクメンタという芸術祭がドイツのカッセルで5年ごとに行われている。今年は15回目で、元々ナチス政権下、退廃芸術とされた作品を再展示することから始まった。近年、脱西欧中心主義を掲げ、積極的に非西欧国の作家を招いて独自の価値観を形成している。その…

ガエターノ・ペッシェ -芸術の社会性について-

ガエターノ・ペッシェ(以下ガエターノ)という人がいる。イタリア人建築家であり、デザイナーである。それとも彼は芸術家だと紹介した方が良いのであろうか。私がデザインを学んでいたころ彼の名前を知った。芸術的な家具に憧れていた私にはスター的存在であ…

現在のウクライナ絵画 -芸術の社会性について-

毎日届くウクライナ侵攻のニュース。報道を見ながら、モヤモヤした思いをする。この戦争ほどメディアの存在を感じる戦争はない。いつの時代も戦争とメディアは互いを必要とするし、自分の意識のせいでもあるとは思うが、変な距離の近さを感じてしまう。それ…

ジェフ・クーンズの芸術らしさ -芸術の社会性について-

ジェフ・クーンズ作品 オクサナ・ジュニクルプ作品 今回、ウクライナの芸術について触れた文章を書こうとしていた。その内にある作家に辿りついた。それはアメリカの美術家ジェフ・クーンズ(以下クーンズ)である。何故辿り着いたかと言えば、ウクライナ人…

芸術と自由 -芸術の社会性について-

「芸術と自由」と書くと何か一昔前の言葉のように感じるが、先日職場の施設で自由について実感したので少し考えてみたい。その日は創作活動という枠で、絵を描いたり織りを織ったりする時間であった。職場は所謂「重心」と呼ばれる重度心身障害者の通所施設…

バックミンスター・フラーの世界  -芸術の社会性についてー

先日放置していた歯痛を治しに歯医者へ行った。そこに偶然テンセグリティ(宙に浮いたように見える構造)の模型が置いてあった。調べると、アメリカの彫刻家ケネス・スネルソンの作品に使われていた引張力と圧縮材の構造に、テンセグリティ(張力+統合)と…

人と作品 -芸術の社会性について-

横浜のあざみ野スペースナナで行われている「ココロはずむアート展」に行って来た。106人の障害を持つ方の作品展。今回自分の中で、“人と作品”というテーマで彼らの作品を見ようと思っていた。展覧会では「作家カード」と言われる、制作した作家を施設の職員…