ナンセンスについて

 私はハンス・アルプに影響を受けている。彼は自身の作品について「偶然の法則」という制作方法を語っている。偶然と法則は一見矛盾しているかに見える。しかし彼はそれを自然という媒介を経て、生成する形を探求していったのである。ちぎった紙を使ったコラージュでは,ちぎった紙を手からパラパラと落として、落ちた位置で紙を貼り付ける作品がある。そこには作品の意味性を嫌ったアルプの考え方が表れている。彼は都会から離れて自然の多い田舎で制作することを好んだ。アルプと言えば有機的な丸みを帯びたフォルムを持った彫刻が有名だが、それらも彫刻としての正面性が無く、人を喰ったような所がある。ユーモラスなナンセンス。
 私の作品もナンセンスへの探求は初期の作品からずっと続いている。ただ一言でナンセンスといっても雲を掴むような所があり、それは絵画における反イメージだったり、アートの日常化だったり、絵画のオブジェ化だったりと試行錯誤している。
 アートの反意味。自己矛盾に陥らないように上手に橋を渡って行こう。明るいイメージを持って。
 しかしよく考えてみるとナンセンスという概念自体が偉大な発明だと言わざるを得ない。何かパラレルワールドのように、意味のある社会や日常の傍にそっと潜んでいる可笑しな世界があるような気がする。ああもっと妄想したくなってきた。