松下誠子展を見た。

 今日Gallery and cafe Hasu no hanaで松下誠子展を見た。パラフィン紙を使ったドレスのインスタレーションだった。身体性の強い作品を感じる。彼女の言葉に、人間の肉体が第一の皮膚であるなら、パラフィンドレスは第二の皮膚だとあった。この皮膚をモチーフとした発言の下には実存的なテーマが隠れていることは想像できる。独特の物語性があるが実存をテーマにしながら即物的にならない表現の世界観が良いと思った。彼女は表現ジャンルが多岐に渡るが、それも簡単には捉えにくい実存的なテーマが彼女の周りをグルグル回っているように思えた。
 最近というかずっとというか日本の美術家に実存をテーマにしている作家がある程度いることが気になっていた。それは西洋から入ってきた美術に対して、美術概念は輸入せずに形式だけを取り入れたことからくる歪さに何か関係しているのではないかという気がしてならない。ある種の美術家はそれを無意識に感じて自らの位置を表現で確認し続けているのではないだろうか。目の前に「絵画」や「彫刻」や「インスタレーション」などそれぞれの形式概念を共有していれば、美術家は自分に還元することなく、形式を媒介にして社会にアプローチ出来るだろう。
 見方を変えれば日本の美術に、ある純粋性が担保されているのだが、人間はそんなに強くはないだろう。