「絵画と物語」展を見た。

 最終日ギリギリで「絵画と物語」展をアートトレイスギャラリーで見た。絵画制作の時間軸と物語の時間軸を呼応させ絵画を検証しようというもの。鑑賞時間が短かったせいで、自分の主観から感じたものに留まってしまったが、出品作家の鈴木俊輔と話すことが出来、自分の印象を補足することが出来た。まず「絵画と物語」という展覧会タイトルから導き出される一般的なイメージに出品作家三人がそれぞれのスタンスで応えていたのが面白かった。やはり鑑賞者はまず絵画の物語性を読み取ろうとする。物語とは始点があり終点がある、ある道筋がある。そういう物語という時間軸に対しての絵画制作そのものの時間軸とはどのような同一性と差異性があるのか。鈴木俊輔は普段の抽象的なプロセスの中で事後的に絵画を獲得していく場合に比べて、最初から物語の終点があるものに対してスケッチを重ねながら組み立ててくというプロセスがとても新鮮だといっていた。
 話は少し飛ぶが、私はそう説明してくれる彼にこの三人の作家の共通項があることを伝えた。それは絵画の平面性である。それは感覚としてアプリオリにこの三人の作家を規定している何かであった。鈴木俊輔はキャンバスを張った時点で作品が半分出来上がっているとも言っていた。これは私の作品制作の中でも共有していることである。それは言ってみればそれ以前のタブロー絵画に比べ、もうすでに出来上がっているすでに描かれた何かに対して画家自身の何かを付与していくような、一種冷めた行為としての作品制作をそこに感じてしまうのであった。私はそこに現在ある種の画家が置かれている状況を表しているのではないかと思えた。それは翻って言えば絵画制作と絵画の存在そのものが彼らを制作に駆り立てていると言えるのではないだろうか。それはまた「絵画と物語」展のコンセプトと重なると私には思えた。