背中合わせの実存、松下誠子作品論。

松下誠子の作品に出会ったのは、鵜の木のHasu no hanaで行われたパラフィンドレスが天井から吊るされたインスタレーションだった。そこには、松下誠子の声の作品や、写真を基にしたドローイングなども目撃した。その時の私は、作品から発せられる実存性はか…

「不良実存」展 ー思考する家ー  ”芸術の社会性について”

2017年10月8日(日)−10月30日(月)まで、千葉県江見海岸周辺で山田和夫氏が提供してくれたアトリエ兼住居であるEmiスタジオにおいて「不良実存」展が行われた。筆者である私は同じ企画の第一回目「不良」展からの参加であった。展覧会の企画をした倉重…

リンキンパークの音楽 ”芸術の社会性について”

たまたまラジオを聴いていたら、リンキンパークというアメリカのロックバンドの曲が流れていた。私はこのバンドの知識が全くなかったし、この時もさして気に留めなかった。しかし、時間が空いてスマホで音楽を検索している時リンキンパークのことが思い出さ…

ブランクーシの公園に行く。”芸術の社会性について”

有名なブランクーシの公園は、ルーマニアのトゥルグ・ジウの町にある。私はブランクーシの彫刻に対して確かめたいことが沢山あった。その衝動を確かめるべく、飛行機に乗った。最初に首都のブカレストに降り立ち、そこでレンタカーを借りて4時間ほど掛けて…

感情のグラデーション

職場で障害を持つ方と過ごす内にあることに気がついた。我々は日々様々な感情と共に暮らしている。泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しんだり。そうした感情は、感情のゼロポイントというのがあるとすれば、そこを上に行ったり下に行ったりしているようなも…

モーリス・ド二とピエール・ボナールの違い (芸術の社会性)

東京駅から降りて、三菱一号館美術館へナビ派展を観に行った。ナビ派と言えば、モーリス・ドニが言った「絵画とは平面に塗られた色面の集まりである」が有名だ。私はその言葉を取っ掛かりにしながら会場に入った。先ず目を惹いたのはモーリス・ドニの「ミュ…

砂澤ビッキ展を見た。 (芸術の社会性)

桜の散りかけた曇り空の中、砂澤ビッキ展を葉山に見に行った。北海道旭川の出身でアイヌを祖先に持つ彫刻家だ。私の中ではアイヌを祖先に持つことが、どのような意味を私にもたらしてくれるのか楽しみだった。先ず出迎えてくれたのは、「神の舌」と題された…

ローカルな私達。展(芸術の社会性)

“ローカルな私達。”という展覧会を2017年2月15日から23日まで高島芳幸と大川祐(筆者)の二人の作家で、上野池之端ストアフロントというギャラリーで行った。小さなギャラリー空間(3m四方くらい)だが、そこでしか出来ない展覧会を考えた。通常作家が数人…

暗闇から見えた絵画。倉重光則展

横浜の石川町にあるアトリエKに倉重光則展を見に行った。見に行って先ず思い浮かんだのは、去年の1月に銀座のSteps Galleryで行われた倉重の個展である。その時はEBE(イヴァ)という名の青いネオンで発光した人体(宇宙人のような)の倉重作品を初めて見た…

「感覚の論理学」ドゥルーズ以降の問題圏、座談会を聞いて。

両国のART TRACE GALLERYで“感覚の論理学”ドゥルーズ以降という問題圏、という座談会を聞きに行った。「感覚の論理学」ジル・ドゥルーズ著の訳者の宇野邦一、そして林道郎、松浦寿夫の三人の話を聞いた。不勉強で「感覚の論理学」は読んでいなかったが、楽し…

マリメッコ展を見て(芸術の社会性)

ケシの花の模様で有名なマリメッコデザイン。先日創業者であるアルミ・ラティアの人生を描いた「ファブリックの女王」の上映もあり、気になっていたので「マリメッコ展」を渋谷に見に行った。最初に初期のデザイナーであるヴオッコ・ヌルメスニエミのインタ…

柳幸典展「Wandering Position」(芸術の社会性)

柳幸典展「Wandering Position」を横浜のBankARTNYK館へ見に行った。柳の政治的な作品は単体としては見たことがあったが全体の仕事を俯瞰する今回のような展覧会は初めてだった。会場に入って直ぐに「Article No.9」と題された憲法九条に関する言葉を分節し…

高島芳幸展 日常にある甘美さ

府中にあるギャラリーDODOで高島芳幸「用意されている絵画」展を見た。光が綺麗に入る建物へ入った瞬間に高島のドローイングに迎えられた。私はそのまま立ち止まってしまった。遠くから音楽が聞こえる。グールドのバッハだ。すぐに一緒に来た高島氏と日常に…

山田和夫の作品について。(芸術の社会性)

私も作家として参加した、千葉県鴨川市江見海岸にあるEmiスタジオにて行われたグループ展「不良 思考する家」において山田和夫作品に遭遇した。山田から今回の作品のアイデアは事前に聞いてはいた。山田は良く海鳴りの話をしていた。山田のスタジオ一階から…

トーマス・ルフ展を見て

画像という概念はいつどこから始まったのだろうか。11月13日まで、国立近代美術館においてトーマス・ルフ展を開催している。写真が持っているメディアとしての客観性を問う展覧会。展覧会場で最初に出会うのが、友人をモチーフにして撮った写真を広告写…

反芸術は反社会的か。

第一次世界大戦が起こったころに時を同じくして生まれたダダイズムという芸術運動があった。既成の芸術概念を否定し、詩、絵画、演劇など様々なジャンルで芸術の制度を問い直した。それらは、戦争に対する絶望や虚無的態度から生まれる人間的抵抗を表してい…

「色々な色を作るのが楽しかった」

職場である知的障害者施設での話。最近、利用者の人たちの主体性の助けになればと表現活動で制作した作品を毎日行われる朝の会で、お互いの作品の感想を言ってもらうようにしている。ここのところ彼らに変化が起きている。最初の頃は彼らの作品を作るときの…

文字は情報を運ぶための”モノ”である

先日、「世界の文字の物語」という展覧会を池袋サンシャイン近くにあるオリエント博物館に訪ねた。文字の展覧会とはどういうものなのだろうかというのが、行くきっかけとなった。入場料を払って中へ入ると、ヒエログラフのハンコが用意されていて、自分の名…

色が生まれる時。

知的障害者施設での話。新しく入った利用者が絵を描きたいと言って来た。おう、じゃあやろうということになってアクリル絵の具と画用紙を用意。最初に、何色が良い?と聞いて何色か選んだ。お皿に絵の具を一緒に開け始めた。いつもやっていてチューブから絵…

ジョルジョ・モランディの絵画の社会性について

先日東京ステーションギャラリーにおいてジョルジョ・モランディ「終わりなき変奏」を見た。「終わりなき変奏」という名の通りテーマは同じだが少しずつ違う静物画や風景画を生涯追求した画家の展覧会であった。時代はピカソとブラックがキュビズムの活動を…

ジョルジョ・モランディの静物画について。

ジョルジョ・モランディ展に行った。モランディの静物画について書きたいと思う。先日高島芳幸の絵画に言及していた時にモランディに少し触れた。その時は2次元と3次元の揺らぎを二人の画家の共通項として記した。 モランディ展の最初の一枚はキュビズム的…

高島芳幸 「無題 あるいは もうひとつの用意されている絵画」

東京都美術館において、現代アーチストセンターによるグループ展で高島芳幸の作品に遭遇した。タイトルは、「無題 あるいは もうひとつの用意されている絵画」である。今まで多くはないが高島の作品は見てきた。高島作品は端的に言えば「感じる絵画」である…

松下誠子のパラフィンンドレス。

松下誠子主催のパフォーマンスSecurity blanketの打ち合わせに参加した時のことを報告。場所は渋谷のLE DECOというビルの4F。エレベーターを降りて部屋に入るとすでに参加される人達がいた。面識のある方はいなかった。事前に自分がパラフィンドレスを着て…

人生というゲームを感じさせる絵画、そして画家山田正亮について

少し前になるが、両国にあるArt Trace Galleryにおいて行われた画家山田正亮に関するレクチャーに参加して感じたことを書いておきたい。山田正亮(1930-2010)は哲学的で自己言及的な態度で絵を描く画家である。難解である一方、明快で率直な画風が受け入れ…

松下誠子展「企てる庭」を見る。

横浜の石川町にあるATELIER・Kで松下誠子展「企てる庭」を見た。以前見たパラフィンドレスのインスタレーションではファンタジックでありながらドレスが持つ内と外の関係が放つ実存性に焦点があった。今展では、クッションの形をしたオブジェが数点設置され…

表面に宿る実存。「若林奮展」

府中市美術館に若林奮展を見に行った。以前にもこのブログに若林奮展の記事を書いた。その時の印象と今度は違うのだろうかと考えながら美術館に向かった。若林奮のドローイングや彫刻に目をやりながら私は不思議な気持ちになっていた。私はその時無意識の中…

ベトナム戦争の印象とアート

少し前になるが、森美術館でディンQレ展(2015.7.25-1012)を見に行った。ベトナム戦争をベトナム人がアートとして取り上げていることに同じアジア人として興味を持った。余談だが、同時期に機動戦士ガンダムというアニメの展覧会を同時に森美術館でしていた…

「薄い絵画」について。

最近描いている絵画作品のシリーズタイトルを「薄い絵画」とした。このシリーズは紙に描いたものとパネル布張りに描いたものを並行して制作しながら絵画の実在を追いかけようとしている。元々紙に描いていた仕事は習作のつもりで描いていた。パネル布張りに…

ゲルハルト・リヒター展を見た。

ワコーワークスオブアートでリヒター展を見た。まず目に飛び込んできたのは代表的なスキージ技法によるキャンバス作品、パネル作品があった。実際の作品が大きくなかったせいもあるが、一見大胆に見えるスキージ技法は非常に丁寧に色彩が重なっていてた。動…

成田克彦展

昨日東京造形大学に成田克彦展を見に行った。同時に成田克彦に纏わるシンポジウムが開かれ聴講した。まずは展覧会をと思ってギャラリーへ向かった。私の中では成田克彦はもの派の作家という認識であった。今回その辺の時代の空気を確かめたい欲望も存在して…